Nov 2022
真心(まごころ)。
茶の湯の大家 千利休の逸話。
利休の弟子の家で茶室開きがあり、弟子数名が招かれた。
ところがその家の主人は、利休を前に上がってしまったのか、
柄杓を持つ手が震えて湯をこぼすなど、
小さな失敗を繰り返した。
これを見た弟子たちは、くすくすと忍び笑いをもらした。
しかし、利休は真剣な眼差しで、
じっとその一挙一動を見守っていた。
やがて手前が終わると、利休は主人に向かって
「今日は、近頃にない心のこもったお茶をちょうだいして、
こんなに嬉しいことはありません」
と、大変褒めて帰った。
そして、そのあと同行した弟子たちを強く戒め、こう諭した。
「お前たちは今日の主人の不手際を笑ったが、
とんでもない心得違いだ。
真剣さが高まっての不手際は、真心の現われだ。
あの気持ちの尊さは、何ものにも変えられぬ。
あれが本当の茶というものだ」
同じ不手際でも、真剣さ余っての失敗は、
悪いことではない。
その行為の中に、真心がこもっているかどうかを、
見極める力を身につけていきたいものである。
株式会社GA INC
代表取締役社長 CEO 永 原 清 一